こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

本の紹介: おサケについてのまじめな話

クリニックの本棚にある本の紹介です。

今回は 「おサケについてのまじめな話」 西原理恵子月乃光司 です。

 

アルコール依存症についての話です。西原理恵子さんは漫画家で、「毎日かあさん」などご存知の方がいるかもしれません。

西原さんの元夫はジャーナリストでアルコール依存症でした。本書では西原さんのパートは家族の経験としてのアルコール依存症、月乃さんのパートはアルコール依存症患者としての経験が紹介されています。最後にお二人の座談で締めです。

西原さん曰く、夫は最初は家で暴れていたものの、外では愛想よかったので病気とは思っていなかったようです。アルコール依存症が病気とも知らなかったということ。夫は最後癌でなくなるのですが、それまでにどうやってアルコール依存症治療を受けるようになったのか、最後どのようにまた家族として一緒によい関係に戻ることができたたかが紹介されています。

月乃さんは精神科病院に3回入院、自殺未遂もしたという、かなり波乱万丈の人生を送ってきました。依存症という体験がどういうものか、リアルに描写されています。

文字ばかりの本なのですが、そんなに厚くなく、文字も大きくて、語り口調で書かれているせいか、非常にテンポよく読み進めることができます。描写もリアルで、引き込まれてしまうということでしょうか。抽象的なアルコール依存症解説書ではなくて、アルコール依存症体験記のような感じで、きっと読んだ方の胸には実感をもって響くものと思います。

それでいて、アルコール依存症についての知識は結構しっかりまとめられているので勉強にもなります。

 

うちの家族、アルコール飲みすぎじゃないかとちらっと思われているご家族にも、アルコールのことを人から言われたり、ちょっと飲みすぎかなと思われている方にもおすすめです!

 

 

地域活動支援センター「ザイン」、就労継続支援B型「アズイット」の見学に行きました!

先日、地域活動支援センター「ザイン」に見学に伺いました。

ザインに見学に行こうと思ったら、隣が同系列の就労継続支援B型「アズイット」でしたので、一緒に見学しました。

 

アズイット トップ

 

地活を見学する時にいつも場所がわからなくて困ってしまいますが、よくよく聞いてみると看板を出せない決まり?のようなものがあるようなのですね。私がこれまで訪問した地活は、レモンツリーを除いて、本当に普通の家です。ここも普通の家ですが、家と家がくっついているタイプです!(わかりますか・・・?)壁が肌色です。
良元街道沿いに小林から逆瀬川を目指していく途中で、イタリアレストランがあるのですが、その手前当たりですね。

 

ちなみに、就労継続支援B型というのは、B型作業所とも言ったりしますが、きっちり働くのはまだ難しいという方に簡単な作業をしていただきながら仕事の練習をする場所です。A型というのもあるのですが、A型はさらに仕事に近いようなイメージです。

私が見学に行ったときは、髪をとくブラシの、そのとくところ??がそろっているかという検品をしていたり、神社の縁起物のようなもので福の神?を付ける作業をされていました。それぞれ別のフロアで一人ずつ作業をされていました。ブラシの検品は職員のかたが再度チェックしてみられていました。駐車場の清掃や市役所で野菜販売などもされているようです。

 

ちょっと話がずれました。

私がすごいなと思った、「ザイン」「アズイット」の特徴は2つあります。

一つは職員と利用者が上下関係を作らず協働の精神で運営するという理念です。言葉だけかなと思いきや、職員の方が制服とか名札を付けていないので、誰が職員で誰が利用者か最後までわかりませんでした・・・理念を形にしている点、見習わなければと思いました。

もう一つは、地域活動支援センターとB型作業所が隣り合っているところです。二つの家がくっついているというイメージですね。B型は少し仕事を意識する場所ですが、地活も利用しながらB型という利用者もいます。そうすると、地活だけ利用している人も、「あの人がB型やっているなら私も」という感じで、刺激を受けるようです。

仕事なんて想像がつかないと思っている患者さんも多くいらっしゃいますが、これまでの私の経験では、そういう方がゆっくりステップを踏めば、意外に仕事をされて、ご自身の役割を見つけられることも多いです。そうするとずいぶん気持ちも変わられる方もいます。
ただ、身近にそういうステップを踏まれて仕事をされている方がいるのといないのでは、ずいぶんイメージのしやすさも違うと思います。

その点この「ザイン」「アズイット」はとてもよいと思いました。

居場所型の地活とB型、A型の間の交流の機会がもっとあると利用されている方も新しい可能性や刺激を受けることもあるように思います。

 

建物は2階建て+屋根裏です。パソコンの部屋があったり、作業の部屋があったりです。ザインもアズイットも作りは同じです。屋根裏ははしごでのぼります。片方はゆっくりできるスペースがあって、もう片方の家のほうはダンベルがあったりして運動できるそうです。夏は暑そうですが、静かで落ち着きました。

ある部屋では何人かでUNOしていたり、ある部屋では、駐車場の清掃の報告をしていたり、内職していたりです。ただ、誰が職員なのか利用者なのか、やっぱり見分けがつきません。

もともとは発達障害の方の居場所としてスタートしたということですが、現在は発達障害にこだわらず支援をされています。

精神科医の方も勉強会の講師として呼ばれたりされているようなので、私もぜひご協力できたらとお伝えして帰りました。

 

いくつか地活を見てきましたが、一口に地活といっても全然様子が違うので、それぞれの持ち味を患者さんに紹介できるようになったら良いなと思います。そういう情報が障害福祉課などで提供されると患者さんも助かるかもしれません。

しかし!まずは当院がすすんでこのような情報を患者さんに届ける工夫をしていこうと計画しようと思います(このブログも一つです)。また、我々医療機関も地域の就労支援機関の方々と積極的に交流して、お互いの希望や困った点を交流しつつ、新しい解決方法や支援方法を編み出していけたらいいですね。

より多くの患者さんの可能性に貢献したいです。

 

本の紹介: 認知症と診断されたあなたへ

クリニックの本棚にある本の紹介です。

認知症と診断されたあなたへ 小澤勲、黒川由紀子編著

 

認知症の方の家族に向けた本や介護の本は色々とありますが、診断されたご本人への本はなかなかありません。本書は2005年に出版された本で、少し古いですが、認知症と診断された方が心配に思うだろうという点をたくさん書いてくれています。

本の構成は、認知症と診断された方からの疑問や心配に答える形で構成されています。

例えば「食事について、気をつけたほうがよいことはありますか?」とか「家族や周囲のお荷物にはなりたくないのですが…。」という問いに対して、著者が大体1,2ページで答えるという形式です。

取り上げられた疑問を見ていると、こういうことは心配になるだろうなと思うものばかりです。そういう意味では、認知症と診断された人以外が読んでみて、認知症の方を理解しようとするご家族や医療者にもとても役立つ本だと思います。

答えは温かみがあるのですが、頭が良い方が書いているのでちょっと難しく感じるところもあります。文章の中には、他の推薦図書も含まれています。絶版になっているものもありますが、興味があれば、探してみると参考になることがあるかもしれません。

著者はベテランの精神科医です。執筆当時末期の肺がんになられていました。そのような状況で書かれていることを想像すると、患者さんへの思いが伝わってくるようです。小澤勲先生はもうなくなられていますが、この他にも認知症の本を書かれています。難しい本もありますが、医療者には勉強になると思います。

 

認知症と診断されたあなたへ

認知症と診断されたあなたへ

 

 

 

訪問看護ステーションの方々とのミーティング

先日、とある訪問看護ステーションの方々と受け持ちの患者さんについて、一区切りの振り返りミーティングを行いました。

これまでは、難しい事例について、訪看含め、色々な関係機関で集まって話し合うという会は時々ありました。

しかし、今回は現状の問題に対してではなくて、振り返りという形でお互いに話をしてみようということを行いました。

こういったことをやろうと思った理由は、まず第一に、その訪問看護ステーションの方が日々非常に丁寧に対応してくださっており、ぜひさらにつながりを強く持ちたいと思ったからです。困っていること、疑問に思われていることをお互いに共有することで、精神科訪問看護をさらに長く続けていただきたいと思いました。私自身もよりよく協働できるように色々伺いたかったこともあります。第二は、当院のようなクリニックがあるということを知っていただき、何かあればお役に立てたらと思ったからです。

30分弱でしたが、お菓子を食べながら、色々なお話ができたと思います。実り多いひと時でした。このような機会が増えたらとても嬉しいことです。

精神科の訪問看護の役割ということも、看護師さんとともに今後深めていきたいです。

睡眠時無呼吸症候群について 2019/4/11の情報

睡眠時無呼吸症候群について、信頼できる医学雑誌で記事になっていたのでダイジェストでご紹介します。

Solomon G. Obstfuctive sleep apnea in adults. New England Journal of Medicine 380; 15: 1442-1449.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcp1816152?query=BUL

 

睡眠時無呼吸症候群は、寝ている時に気道が時々閉じてしまって呼吸が少なくなったり、一時的になくなって、低酸素状態になり、場合によっては起きてしまうという状態です。

米国では30歳から49歳の女性の3%、男性の10%、50歳から70歳の女性の9%、男性の17%に生じていると推測されています。

BMI(体重÷身長÷身長)が30以上の方では40%以上、メタボリック症候群の方の60%以上が睡眠時無呼吸だったという報告もあります。

 

睡眠時無呼吸と心血管疾患のリスクには関連があります。1時間で11回を超える無呼吸があると、1時間で1.4回の無呼吸の人と比べて高血圧、脳卒中、心血管疾患が多かったということです。

 

睡眠時無呼吸の検査には、外来でできる簡易検査と1泊入院で行う詳細検査があります。

 

CPAPという睡眠時無呼吸の治療によって、健康感じや活力、疲労感や日中の眠気が治療を受けない人に比べて改善するという研究があります。しかし、心血管疾患を改善するかどうかはまだ不明確です。ある研究ではCPAPで改善は認めなかったというものもあります。

 

以下は私の感想です。

不眠の方の中には、夜中のいびきが強いとか、息が止まっているということをおっしゃったり、日中の眠気がすごいという方がいます。長く寝ているのにすっきりしないとか、疲労感がたまる、夜中にトイレで起きる、起きたら口が渇いている、朝に頭痛がするなどという方もいます。

特に体重が多い方は一度チェックもよいかもしれません。体重が少なくてもなかなか改善しないようなら睡眠時無呼吸についてクリニックで相談するのもよいでしょう。

 

 

 

 

 

本の紹介: 自分の気持ちをきちんと<伝える>技術

クリニックの本棚にある本の紹介です。

「自分の気持ちをきちんと<伝える>技術」平木典子著

 

先日、アサーション=自分の気持ちを攻撃的ではなくしっかり伝える方法、の漫画をご紹介しました。

この本は同じ著者が書いたもので、文字と絵がメインの本です。見開き1ページに絵と文が半々なのでとても読みやすいです。また、先日ご紹介した漫画と違って、物語が省かれているので、アサーションに集中してより詳しい内容を知ることができます。

内容もとても整理されていて、一つ一つの見開きごとにわかりやすいポイントが示されています。ポイントを読むだけでも、あー確かにそうかもと目からうろこが落ちることが結構あるかもしれません。いくつかご紹介しましょう。

「誤解やズレは当たり前と考える」
「すべてを伝えることはできない」
「皆、自分なりの見方や感じ方で世界をとらえている」
「神ならぬ人間は完ぺきではありえないので、失敗はしてもいい。」
「人を傷つけないにこしたことはないけれども、傷つけることもあり得ると覚悟する」
「自分を知らせないで人と仲よくなったりすることはない」
アサーションするもしないも、自分の責任で選べばよい」

 

コミュニケーションに悩んだ時には繰り返しこの本を開いてみると、その都度発見があるかもしれません。お勧めです。

 

図解 自分の気持ちをきちんと「伝える」技術―人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ

図解 自分の気持ちをきちんと「伝える」技術―人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ

 

 

本の紹介: マンガでやさしくわかるアサーション

クリニックの本棚にある本を紹介します。

「マンガでやさしくわかるアサーション」平木典子著

 

どうやって自分の気持ちを伝えたらよいか、難しい時がありますよね。

相手に心地よいことならまだ話しやすいですが、自分がやられて嫌なことをあまり角が立たないように伝えるにはどうしたらよいでしょうか?

そんなことが、漫画でわかりやすく紹介されています。自分の気持ちを言えないキャビンアテンダントさんが、どうやって自分の気持ちをしっかり伝えることができるようになるのか・・・ストーリも軽く読めて楽しいです。

 

良いコミュニケーションの方法、名付けて「アサーション」。

自分の要求を攻撃的に伝えるのも行きすぎですが、自分の気持ちを伝えないのも引っ込みすぎです。

この両者の中間を目指すのが「アサーション」という方法です。方法も体系化されていて、DESC法と名前が付けられています。マンガの中でこの方法も紹介されています。

 

私は学生時代に友達が人に上手に話しているのをみて、自分が情けなくなったことがあります。その時に、自己主張トレーニングという本を読みましたが、それがまさしくアサーションの本でした。それにはDESC法のような方法は示されていませんでしたが、しっかり言うことは言わないとならないんだなと思ったのを記憶しています。ちなみに、私の下宿に友達が来て、その本を発見されてしまい、彼に会うたびに、自己主張トレーニングだもなと笑いながら言われました。彼は弁護士になりました。私は紆余曲折で精神科医になりましたが、伝えるだけではなくて、聞く技術もますます磨かねばと日々考えております。

 

話が横道にそれましたが、アサーションって何だろうということを気楽に読むにはとても良い本だと思います。もう少ししっかり知りたいなと思う方は、同じ著者の「自分の気持ちをきちんと<伝える>技術」がとてもお勧めです。これもまたいずれご紹介しようと思います。

 

マンガでやさしくわかるアサーション

マンガでやさしくわかるアサーション