私は自転車で通勤していることも多いのですが、朝の道すがら、白髪のおじいさんが袋を持って立っています。このおじいさん、自転車で前を通ると、さっと手を挙げてくれるのです。さしづめ「よお!」みたいな感じです。他にも自転車で通る人がいて、どうも通る人、通る人に手を挙げているようです。
時々デイサービスの車に乗っているところに遭遇するので、もしかしたら認知症もあるのかもしれません。
当初は変わった人だなと思っていたのですが、日がたつにつれ、また大変なことがあった時におじいさんが手を挙げてくれると、なんだか後輩を励ましてくれているような、温かい気持ちになります。
この方のことを思い出して、人の役に立つ、とはどういうことだろうと考えました。このおじいさんは、私の代わりに診察をしてくれるわけでもなく、患者さんを良くしてくれるわけでもありません。でも、私の心をふと支えてくれる時がある。そんな私の内面など、このおじいさんは知らないでしょう。
自分が何の役に立っているのだろう、自分など何の役にも立っていないのではと悩むことがあるかもしれません。しかし、物事はそんなに単純ではなくて、生きている限りきっと何かを支えているのだと私は思います。このおじいさんを見ているとそう思うのです。
そう、そういえば昔、家の近くで夕方になると交差点の花壇のふちに座って道を懐中電灯で照らしているおじいさんもいました。事故にあわないようにという気づかいだったのでしょうか?今はもうそのおじいさんはいませんが、記憶には残っています。その記憶も私の心を温かくします。
もしも、これまでに小さなことでも少しでも心温まる記憶があれば、ぜひ時々掘り出して思い出してほしいと思います。きっと何かの支えになると思います。
本当はそんな心温まるものをくれた方に勇気をもって、ありがとうと伝えるとよいのでしょう。きっと伝えられた方も、その言葉によって心温まると思います。
そうやって自分や人の記憶に温かい記憶が残っていく。それがまた次の人へと脈々と続いていくと良いですね。