こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

2018年を振り返って、2019年の目標

当院の仕事納めは12月28日でした。11月に大橋先生より継承開業してようやく2か月目で本年の締めくくりとなりました。振り返りと来年の目標を記します。

基本的な姿勢は、

1.自分の家族に受けてほしい医療、私自身が受けたい医療を目標にして診療を行う
2.必要な医療や支援が届いていない方に、訪問診療や他機関との連携を通じて、必要な治療や支援を届けることを目指す

ということです。 

1については標準的な治療を提供して、不明瞭な点は可能な限り現在の研究を勉強するようにしています。継承開業後に新たに導入、工夫し始めた点は、
・睡眠時無呼吸の簡易検査を導入しました。
・待合室に、セルフヘルプ本や疾患についての本を充実させました。
・就労支援や自助会についての手製のパンフを作成しました。

 

・睡眠時無呼吸検査について:

睡眠時無呼吸症候群については、おそらく精神科や心療内科を受診する不眠症患者に少なくない割合でいらっしゃるのではと思っています(これは今後検証していこうと思います)。睡眠時無呼吸症候群の方に、筋肉を緩める作用のある睡眠薬を処方するとかえって、浅眠となったり倦怠感が残る場合や、不眠がなかなか改善しない場合があります。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の検査はこれまで私が勤務していたところでは実施しておらず、もっぱら他院へ紹介して検査して頂いておりました。これでは、患者さんに2度手間をとらせてしまうことになります。
早速、当院でも簡易検査の導入をしました。疑わしい方にお勧めしておりますが、睡眠時無呼吸の診断に至る方も多く、導入してよかったと思います。
今後は、睡眠時無呼吸症候群の方を見逃さない、あるいは診断にいたるような、簡便な問診方法を、これまでの研究を調査し、当院でさらに良いものを開発して世界に提案していきたいと思っています。(2019年、2020年目標)

・セルフヘルプ本、資料について

どうしても患者さんには診察まで待っていただくことが出てしまいます。しかし、その間も治療に活用したいと思っています。
心療内科・精神科でなければ得られない情報を、私が実際に読んで役に立ちそうと思ったセルフヘルプ本を待合室に充実させていこうと思っています。自宅にあるものを少しずつ持ち込んでいます。
今後は当院に通院中の方だけではなく、他に困ってい方のお役に立てるよう、ブログ上でも本の紹介をしていければと思います。(2019年目標)

自作の資料も充実させたいと思います。短い診察時間では伝えきれないことも多いので、資料を使いながらお役に立つ情報を提供したいと思います。現在は就労支援、アルコール依存症の自助会の資料を作成しました。来年は、不安についてとか、気分についての資料、就労支援の資料も私が見学した施設の情報も盛り込んでいきたいと思います。(2019年目標)

・その他の目標
心理療法(カウンセリング)も始めたいですが、しっかりとした技術を持った方で当院に来ていただけるカウンセラーを探し始めようと思います。また、私自身もこれまで認知行動療法を軸としたカウンセリングを時間をとっておこなってきたので、当院でもカウンセリング枠を設けて実施をしていきたいです。どのように時間をやりくりしていくかが一番の課題ですが、2019年に考えていきたいと思います。(長期的に考える)

 

2.必要な医療や支援が届いていない方に、訪問診療や他機関との連携を通じて、必要な治療や支援を届けることを目指す、について:

少数の方ですが訪問診療を開始しています。色々な機関の方とつながることで、必要としている方がさらに見えてくるのではと思っています。
訪問診療のその先を考えた場合、生活面に精通する精神保健福祉士の協力が得られればさらに仕事がやりやすくなります。有能な方を引き続き探していこうと思います。現在は、他の機関の方と協力すること、私自身が精神保健福祉士の仕事を実地で勉強していくことを継続していきます。このスタイルを発展させることもありかもしれません。(長期的に考える)

就労支援については、実際に関連の施設に見学にいくことを続けていきます。機関や施設を患者さんに具体的にご紹介できるようにしていきたいと思います。月1ペースぐらいで回ることができたらと思っています。地域の素晴らしい方々に巡り合えてとてもよい試みと感じています。(2019年目標)

 

3.その他

当院での仕事の他、大学での研究、産業医の仕事を持っています。またお役に立つものがあれば、書籍としてまとめたり、翻訳をしていきたいと思っています。

大学での研究との関係では、2つのガイドライン作成に関わり、大学での研究自体も実際の臨床に直接関連する事柄なども含めて幅広く継続しています。2019年には、他院での研究ですが、ひきこもりを経験した方がどのくらい外来受診されているのか、どのような特徴があるのか、その1年後はどのようになっているのかなどをまとめたいと思います。また、うつ病の種類にメランコリー型というものがあるのですが、その型と抗うつ薬の治療効果に関連があるのかどうかを現在論文としてまとめています。その他、色々な研究の手伝いをしているので、主著ではない論文は色々とご報告できると思います。

私にはシステマティックレビュー&メタアナリシスという研究を行う技術があり、日本で正確に行うことができる方はそこまで多くはありません。この技術は、簡単に言うと、これまでだされた研究を網羅的に調べ上げて、その結果を足し算して、最終的な結果を出すという技術です。この技術があるためにガイドライン作成に関わることができています。より多くの方にこの技術を伝えるために2018年には母校の北海道大学で講演を行いました。2019年には、北海道で継続的に講義・演習を行い、参加者が論文を書いて発表できるまでに手伝いをしたいと思います。私は学士編入と言って3年次から北海道大学の医学部に入学しました(編入試験入学の一期生です)。この恩返しを故郷や母校にもしていきたいと思っています。2019年1月下旬に再度訪れる予定です。

産業医の仕事は1つの企業で行っています。クリニック内だけではなくて、実際の企業でも勤務することで、色々な視点を学ぶことができます。継続して関わっていければと思います。どう貢献するか工夫を考えていきたいです。

2018年には1冊翻訳をしました。書籍については一つ企画をしていますが、3年越しで停滞しています。ぜひ形にしたいと思います。医療者に向けた本ですが、まさに今の私にも役に立つ本になると思います。共著の本は1冊進行中です。こちらは2019年には出版されるかなと思います。

恩師のお声がけなどで、2018年は私の経験や技術を他の方にお伝えする機会もありました。ガイドライン作成や心療内科学会でのシンポジスト、また多文化間精神医学学会の2019年総会のプログラム委員として参加することになりました。厚労省認知行動療法研修の関西での講師も今年も行いました。これで3年目です。
これまでの経験を十分に活かしていきたいと思います。しかし、まだまだ力不足も痛感しています。実臨床に生かすべく能力を磨いていきたいと思います。

色々な方のお役に立ちたいと思っています。2019年もどうぞよろしくお願い申し上げます。