こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

第7回 障碍者雇用啓発セミナー 精神障碍者がホームヘルパー ~社会適応訓練から雇用へ~ を聞いて

今回は当院精神保健福祉士木村のレポートです。

 

 兵庫県姫路市香寺町にある有限会社サポートセンターれいめい代表取締役 野村浩之さんとピアヘルパー(障害を持ちながらヘルパーをされている方)の2名による体験を聞いてきました。

 何が精神障碍の方を雇うきっかけだったのかという話から始まりました。きっかけは、平成16年9月からヘルパー派遣事業を開始されていた時に、ホームヘルパーの中に自分の障害を明かさないで仕事をしている人がいたことだったそうです。丁寧に仕事をする方だったこともあり、こんな人こそ雇いたいと思ってハローワークや保健所に紹介をお願いして回ったそうです。翌年の平成17年から社会適応訓練協力事業所として訓練生の受け入れを開始され、現在まで総数15名の訓練生の受け入れ、そのうち10名が(自社5名・他社5名)就職されたそうです。

 当時は周囲の理解が寛容でなく、色々な批判も受けたそうです。しかし、最近では、皆で頑張ってきたこともあり、見直してもらえるようになったと話されていました。

 働いておられる方も、病気の発症を機に絶望し、夢や希望を持たない生活を送っておられましたが、もう一度働きたいという思いを支えにしていたそうです。今でこそ明るく話されていましたが、御自身の成長と共に周りの理解やサポートを得ていく過程は、当時は苦労や苦しみも相当なものだったのだろうと想像します。

 野村さんは「就労支援ってなんだ?まずは立ち上がる勇気を持ってもらうことが一番と思って、話し合ってきたし、思いを知ろうと努力した」と仰ってました。

 就労している二人の方も、「失敗しても怒られない。失敗から学ぶ機会をもらえた。前向きに失敗できた」と応じられていました。そして、「利用者の方にも甘えることで、利用者の人も役に立てると喜ばれたことが、自分が変わるきっかけだった。真剣に取り組めば出来ないことはない。続けていくうちに出来るようになってしまった」と笑いながら話をされていました。肩ひじ張るのではない、自然な自信を感じました。

 凄いことですよね。立ち上がるといっても、どんなに自分一人で頑張ったって成り立たない。他者と関わり、他者から受け止められ、受け止められたことを受け止め、相互に影響しあうことで成り立つのだと思いました。

 暖かい夢のある話一方で、仕事という枠を超えた支援をされていて、凄いなと、圧倒されていました。

 最後にいつくかの名言を添えてセミナーは終えましたが、そのうち1つ2つを書き残してこの文章も締めたいと思います。

・神は私たちに二つの手を与えた。一つは受け取る手。一つは与える手

(Bグレアム1918~)

・私にとって大切なのは、私が持っているものであって、私が失ったものではない!

パラリンピック走り幅跳び 日本代表 佐藤真海

・障碍のある人にやさしい街は、全ての人にやさしい街。障碍者の働く会社は、全ての人に働きやすい会社。