こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

看板?が変わりました

先日、建物のオーナーの方から看板を変えて下さるというお知らせをいただきました。だいぶ古くなっていたので、当院が入っている建物のテナントの方の看板を全部変えることになったようです。

最初は銀色の、今風のおしゃれな看板を提案されたのですが、私としてはもうちょっと温かみがあった方がいいなと思いつつ、でも皆さん銀色のパネルに統一されるのかなと思って、銀色の看板で一度はお願いしました。

でもやはり、これからしばらくお世話になる看板なので、なんとなくあきらめきれず、もう一度デザインを見せてくださいとオーナーさんにお伝えしました。そうしたら、オーナーさんが察してくれたのか、色付きの看板を提案してくださいました。よかったよかった。

やっぱり自分の気持ちはしっかり伝えないといけないですね(今回もあんまり伝えていないですが)。

 

自分が気持ちを伝えるのは自由ですが、それを受け取った方がどう行動されるかもその方の自由です。そんな風に思っておくと、気持ちを伝えるプレッシャーが少なくなったり、相手が自分の思い通りに行かなかった時もあきらめがつきやすくなるかもしれませんよ。

新しい看板です

 

6年が過ぎました

今日の昼休みに職員から6年を過ぎたお祝いのお花をいただきました。

前院長の大橋先生は恐らく18年ほどこのクリニックを運営されていらっしゃいました。それを考えると、まだまだ道半ばです。

○    治療や支援が届いていない人に届ける
○    当院でしかできないことに少しずつ挑戦して、他でもできるようにしていく

という目標で進んできました。訪問診療、強迫症治療アプリの開発、就労支援の交流会の実施などゆっくりとですが、少しずつ進んでいます。過去の職場の上司からの誘いで、神戸市のアウトリーチチームの医師としても活動をしています。

困難な問題は多いですが、少しでも解決の糸口を見つけることができたらなあと思いつつ、一日一日を乗り切っている日々です。

こうした活動は、職員、チームのメンバー、地域の関係機関の力がなくては進むことはできません。心から感謝申し上げております。私はその輪の一員として、世に貢献出来たらと思っています。

このような挑戦ができるのも、前院長の大橋先生がこのクリニックを私に託してくださったからこそです。ありがとうございます。

色々な方に恩返しができるように、ラッキーセブンの7年目に突入してまいります。

なにはともあれ、健康あっての日々です。皆様もお体にお気をつけてお過ごしください。大橋クリニックが少しでもお役に立てたらと思っております。

職員からいただいた花です。とてもきれいなので来院の際にご覧ください!

 

本の紹介「働くこととリカバリーIPSハンドブック」

本日は本の紹介です「働くこととリカバリーIPSハンドブック」中原さとみ、飯野雄治著。

 

 

前回、就労支援の方法の一つIPSを使っている人、支援者の体験談をご紹介しました。本当はそのシリーズのIPSの本を紹介したかったのですが、なぜか発見できず、今回の本を紹介します。

この本はとっても色々なことを詰め込んでいる本です。体験談、利用者が目標に向かって進んでいくためのワークシート、面接チェックリスト、IPSの概要、支援者のための職場開拓の方法などなどがあります。資料もついているのですが、そこだけは哲学的でちょっと難しかったです。

いろいろ詰め込んでいる割には読みやすくて、実践的な本でした。

この中にあるものを、資料として使いながら支援したり、利用者に活用していただくととってもいいのではないかと思います。以前、「仕事だいじょうぶの本」をご紹介しましたが、そちらは就職や仕事してからに特化していますが、今回ご紹介した本はもうちょっとモチベーションとか目標とか、困ったときの対処など心理面の情報が多いと思います。とてもおすすめはできますが、どうも古本しか買えないかもしれません・・・紹介しておいて何ですが、すみません。

 

ohashiclinic.hateblo.jp

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本の紹介「私のリカバリーストーリー3」

今回は本の紹介です。

「私のリカバリーストーリー3」です。

就労支援の方法の一つにIPS(Individual:個人個人に合わせた Placement: 場所の Support: サポート)=個別就労支援プログラムというものがあります。個別に希望や能力を聞きながら、仕事を探しサポートするというものです。

援助付き雇用/個別就労支援プログラム | 就労 | こころとくらし by 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部

この本はIPSを用いて就労を目指した方や、支援した方の感想が書かれています。生の声が掲載されているので、就労どうしようかなと考えている方や支援者にぜひ読んでいただきたい本です。

就労支援とはなっていますが、IPSの単語をよく見ると、どこにも仕事という単語が入っておらず、代わりにPlacement=配置、という言葉が入っています。

本書でもちらっと書かれている方がいましたが、究極的には本人がどういう生き方をしたいのかというのが重要であって、それが就労であればサポートする、別の方向性であればその方向を支援する、という意味合いなんだろうなと思います。

就労については、診療をしているととても迷うことがあります。仕事(家事やボランティアも含む)をするということは人に役に立っている感じがしたり、時に社会と接点をもつような感じがしたりして心の面でよい役割があるように思います。収入が増えることもあるでしょう。しかし、仕事がなかなかできない、したくないという方もいます。それは一つの生き方でもあると思います。一方で日本の憲法では勤労は国民の義務とも書いています。勤労といえば会社勤めみたいなイメージがありますが、家事もボランティアも勤労ですし、もっと広い意味で勤労をとらえたらよいのかなとも思います。それから他の文化を見て見ると、勤労が義務と憲法で書いている国はそんなに多くないようです。そうすると人として仕事をするということがどこまで義務なのか。でもそうは言えども日本に住んでいるしなあ、と考えが堂々巡りしてしまって悩むところです。

話が外れましたが、IPSというのは具体的にどんなものなのかというのは本書ではわかりません。このシリーズの別の本に記載されています。以前読んだのですがまだご紹介していないですね。私も記憶が薄れてきたので、また読んでご紹介しようと思います。

 

 

ペンシルバニア大学強迫研修を修了しました

強迫つづきのブログですみません。

今年の3月から6月までペンシルバニア大学の強迫症プログラムの研修を受けました。とはいえ、現地にいくのではなくて、Webを使った研修でした。向こうは朝、こちらは夜で、毎週2時間なのでなかなか大変でした。修了証がとどいたので思わずブログで報告です。

私の強迫症治療は、元々マサチューセッツ総合病院強迫性障害研究所につとめていた堀越先生という認知行動療法の達人がいるのですが、その方の教え子にあたるかたから教えてもらいました。ですので、研修では新しい情報は多くはなかったのですが、今までの方法を改めて確認する機会にはなりました。暴露の進め方のスケジュールや想像暴露という方法については、より詳しく学ぶことができたと思います。

現在、当院で実施している強迫症の治療や認知行動療法は木村カウンセラーに実施してもらっています。新しい情報を共有しながらよりよい治療を提供していきたいと思っています。

 

強迫症アプリの論文が出版されました

現在、強迫症アプリの開発をしています。

強迫症、ご存じですか?鍵やガス栓などなど何度も確認したり、汚れが気になって、何度も手洗いをして時間がとられてしまう、などなど、そんなにする必要はないのにしてしまって、生活がつらくなるという病気です。頭の中でするわけがないのに不道徳なことを考えて繰り返し打ち消して行動できなくなるという方もいらっしゃいます。

強迫症には薬と暴露反応妨害法というものを含んだカウンセリングが有効で、両方したほうがよりよいといわれています。しかし、このカウンセリングは技術が必要で、できる治療者が限られているし、費用も掛かります。

そこで、どんなクリニックでもこのアプリを使えば心理療法の代わりになるというようなアプリができたらと思って、開発をしているところなんです。その、試作1号、2号の結果を論文にしました。

http://dx.doi.org/10.1002/pcn5.70009

試作2号の結果が良かったので、少し改善を加えて、いよいよしっかりした比較試験を実施しようと計画しています。

比較試験というのは、使った人と、使わなかった人を比較して効果を見る研究です。よく健康食品などはそんなことをせずに、使った前後で良くなったかどうかを見ているものが多いと思いますが、それでは実際には効果を検証したことにはなりません。使わなかった人より良かったということを言わなければいけないのです。というのも、使わない人だって、その期間で良くなるかもしれませんよね。

強迫症の1年間の有病率は1%程度といわれています。比較試験には、まとまった数の患者さんの参加が必要なので、とても一つの医療機関ではできません。そこで、現在いくつかの医療機関の方々に声をかけているところです。

きっと患者さんのお役に立つと思って、進めております。

 

自分史を書くということ

「自分史の書き方」という立花隆さんの本を読みました。自分史を書こうと思ったからではなくて、立花隆さんの他の本を改めて読もうと思って、検索したところ、評判の良いこの本があったので、読んでみることにしたのです。

 

この本は、シニア向けに行われた大学のクラスを書籍にした本です。確かに自分史の書き方も書かれてはいるのですが、その中で作られた生徒たち(といってもご年配の方々ですが)のストーリーが印象に残りました。そうして、振り返り書くことの意味を確認できたように思います。

精神科で、ある疾患の治療の中に、過去の話を書くというものがあります。過去の話を書かないにせよ、過去の場面を振り返るというのはいくつかの疾患の治療で取り入れられています。

「過去の事実は変えられない」という方がいます。ところが、実は、人の中の事実というのは、その人の記憶であり、記憶に対する解釈なのです。そうして、面白いことに、記憶というのは思い出すたびに少しずつ変化していきます。また解釈も十分変わりえます。

「自分史の書き方」では、書くことへの躊躇や、書くにつれて過去のことの整理がついていく様子がわかります。立花さんはただただ自分に注目するだけではなく、その時代の背景にも注目するように促しました。自分という人生は、自分の選択だけではなく、色々な要因に影響されながら作られていくこと、これも大事な視点だと思います。そんなことを観察しながら、書き、コメントをもらい、読み、また書く。この繰り返しが、なにがしかの癒しを生徒にもたらしていく過程が読んでいると伝わってきました。

これを読みながら、精神科の治療に似ているなと思ったのですが、本当は精神科の方法というより、古くからある、人の癒しの工夫なのかもしれません。

ちなみに私は立花隆さんの本が好きです。高校時代に「精神と物質」という本を読んで、脳の研究者になりたいと思ったし、「臨死体験」とか「宇宙からの帰還」もとても面白かった。今回は「宇宙からの帰還」という本を再度読もうと思って、この本を発見したんです。