こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

専門家向け: 人を介しない強迫症治療ソフトのシステマティックレビューレビュー

専門家向けの話題です。

私の専門の一つに、システマティックレビュー&メタアナリシスというものがあります。これは、ある疑問に対して、これまで行われた研究を総合して、どういう答えが得られるかをまとめる研究です。

例えば、〇〇病に対して△という薬がどの程度効くのか?という疑問があったとしましょう。このような疑問に対して、大概はたくさんの研究がされています。

あるときに出された研究では、かなり効く、また別の研究では効かない、またまた別の研究ではちょっと効く、など時には矛盾した研究結果が出ていることがあります。

ステマティックレビュー&メタアナリシスでは、まず、現在どのくらい、その疑問に対する研究がされているかを探して、見つけた研究の結果を統合して、最終的な結論を出します。

もれがないように検索式を作り、複数のデータベースで検索します。何千という検索結果から、該当する研究を探して、その結果を統合するのです。

一人では間違いが生じるので、必ず2人以上で結果を合わせながら作業を進めていきます。ですので、まずまずの人数で進めなければ大変です。

治療ガイドライン、というものを見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、治療ガイドラインは、このシステマティックレビュー&メタアナリシスの結果に基づいて書かれていることが多いです。

さて、先日もご紹介したように最近、強迫性障害の治療ソフトを開発しているので、いったい世の中に私が作ろうとしているものと同じものがあるかを、開発に並行して、システマティックレビュー&メタアナリシスを行いました。

www.jmir.org

結果的には人手を介しない強迫症の治療は昔には少数開発されていましたが、テキストベースでただ読むようなもので、工夫の余地がたくさんありそうでした。

今回開発しているものは、楽しみの要素を取り入れたり、動画をとりいれたりしているので、既存のものよりはずっとよいのではと思っています。が、まずは検証ですね。

7月には少数の方に試していただき、その結果再度改善し、うまくいきそうなら今年度中には本格的な比較研究に進みたいと思っていますが、どうなるか・・・

少数の方に試していただく研究のほうはおかげさまで京都大学の倫理申請でも認可されたので、まずはこちらをしっかり実施したいと思います。

 

専門家向け: 新型コロナウィルス感染症が病院職員に与える精神的な影響

私が研修した病院は神戸市立医療センター中央市民病院という神戸市の中核となる病院です。

研修当時の2009年、新型インフルエンザウィルスが蔓延しました。国内発生の第一例を中央市民病院がみました。当時私は精神科の後期研修医でしたが、発熱外来にも出務して初期は緊迫感がありました。

この経験は記録に残しておいた方が良いと考えて、新型インフルエンザウィルス蔓延が病院職員に与える精神的影響を研究して発表しました。

思いがけないことに10年ほどたち、新型コロナウィルス感染症が蔓延し、当時の私の研究も人の目につくようになり、各国から研究方法などについて問い合わせを受けました。

www.asahi.com

bmcpublichealth.biomedcentral.com

現在は地域のクリニックで働いていますが、古巣の中央市民病院から今回の新型コロナウィルス感染症についての研究を一緒にやらないかとお誘いをうけて、お手伝いをしました。その論文が出版されました。

 

"Psychological impact of the COVID-19 pandemic on hospital workers in Kobe: A cross-sectional survey"

Haruko Fukushima MD,Hissei Imai MD, PhD,Chisato Miyakoshi MD, PhD,Hiroyuki Miyai MD,Kyohei Otani MD, PhD,Shinsuke Aoyama MD, PhD,Kunitaka Matsuishi MD, PhD

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/pcn5.8

 

今回も医療関係者のモチベーションややる気を阻害する因子について調べようと思っていますが、あれからもう10年以上経って、解析の方法ももっと適切な方法があるかなと思い始めるとなかなか筆が進まなくなっています。

でも、今回過去の研究が注目を浴びたように、将来役に立つこともあるかもしれないので、しっかりまとめようと思っています。

本の紹介: 「強迫症を治す」

今回は「強迫症を治す」という本の紹介です。

 

強迫症”をご存知でしょうか?
強迫症とは、確認、汚れ、不吉な考え、物の整列や数字に関することが気になって、何度も確認したり、きれいにしたり、考えを打ち消したり、やり直したりしてしまって、生活に支障をきたす病気です。
 鍵や電気など確認したり、汚いものをきれいにしたりすることは誰でもします。でも、強迫症の場合はその回数や程度が行き過ぎてしまうのです。例えば何時間も入浴したり、確認したりして、外出できなくなると、行きすぎですよね。

本書はなぜ強迫症になってしまうのか、どうやって治療したらよいかを説明した本です。ただ、本書の最大の特徴は、著者の一人が精神科医強迫症になった方で、その体験を患者と医師の視点から説明してくれているところです。どのようにして症状が現れて、ひどくなっていったか、リアルに記載されています。さらに安心なことに、もう一人の著者は日本の強迫症の第一人者という点です。ちなみに、この先生は当院からもそう遠くない兵庫医科大学の精神科の教授の先生です。
 強迫症の本としてはこれ以上ないぐらいの本に思います。強迫症が気になる方はぜひ本書を手に取っていただきたいです。

本書でも紹介されていますが、強迫症の治療はカウンセリングと薬物があります。薬物治療はどのようなクリニックでも行いますが、強迫症のカウンセリングまでしっかりできる医療機関はそう多くはありません。宣伝ですが、当院では強迫症の薬物治療はもちろん、カウンセリングも実施できます。当院では1回50分程度、毎週1回、16回のプログラムでの強迫症に対する認知行動療法というカウンセリングを提供しています。ご興味あれば、ぜひご来院いただければと思います。

さらに、当院では動画で自動的に治療ができないか、京都大学と研究を計画しているところです。現在、倫理審査を受けているところなので、もう少ししたら実施に入ることができるのではないかと思っています。(2022/5/3時点の情報です)

少し話題がそれましたが、本書、お勧めです!

 

本の紹介「東大教授、若年性アルツハイマーになる」

今回は本の紹介です。「東大教授、若年性アルツハイマーになる」若井克子著。

以前、認知症の専門家が認知症になって書かれた本をご紹介しました。

ohashiclinic.hateblo.jp

ご自身からみた認知症の様子について、今もよくご紹介する本です。残念ながら、長谷川和夫先生は2021年11月にお亡くなりになられました。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

今回は、主に家族の視点から書かれた本です。

著者の夫の若井晋先生が認知症ではないかと疑い始めたころのことから、亡くなるまでのお話が書かれてあります。認知症の話題だけではなくて、このご夫婦のなれそめや、若井晋先生がどのような方だったかが、温かみをもって感じられる本です。

一方で、本の中には若井先生が認知症になり始めたころに書かれた直筆の日記の写真があって、そこには何回も漢字を練習している跡があります。そんな、かなりリアルなものも入れられており、ご本人の感情が伝わってくる非常に重みのある本だと思います。

認知症について伝えたいというよりは、このような方がいたこと、そうして、そのような方と一緒に過ごしてきたこと、それを思い返して記したもののように思います。それを私たちに見せてくれた、存在をこの世にそっと置いてくれた、そんな気がしました。

冒頭に、

晋は若年性アルツハイマー病の当事者として、私とともに人生という「旅」を続けてきました。この本はいわば、その旅の記録です。

と書かれてありますが、この表現が一番ぴったりくる本だと思います。

とはいえ、ご家族の悩み、どう付き合っていったかを見せていただくことは、同じような悩みを持たれている方にも参考になるように思います。ぜひ、読んでみていただけたらと思います。

その他、印象に残った言葉を引用して本書の紹介を終わりたいと思います。

ある参加者からは、

「人の価値についてどう思いますか」

と、こんな質問が。とっさには答えにくい問いですが、晋は動じるふうもなく、こう応じたのです。

「人生で一番大切なことは何か、ということが分からない人、分かる人、いろいろあると思うんです。その中で一人一人が自分の生き様に合わせて絶えず歩み続ける。そういう中で私も生きてゆきたい。これからも、この後も生きていきたいなと思います」

 

質問者(クリスティーン・ブライデンは)「アルツハイマーとはどんどん余分なものが取り払われて本当の自分になっていく」とおっしゃっていたけれど、その感じはいかがですか。

晋 今まで自分が何かいいことをしたとか、そういうものが私たちではないんじゃないかと思うんです。

 大切なことは私たちが本当の自分と出会うことじゃないかと。自分が自分になって他の人と一緒に歩んでいけるというところが大切なんじゃないかと思いますね。

 

 

 

つぼみが花となりました

3月にブログを更新してから早1か月。皆さんに本を紹介しようと思っていたのですが、買ったまま読み切れず。自分のリュックの中に入ったままです。

ただいま、強迫性障害の治療を動画を用いて自動的に行うことができないか、そのソフト?を作っていてそちらに時間がとられてしまっております。あともう少しで完成ですが、大学で倫理審査を受けているところで、もうちょっと準備が必要です。

テレビなどでもよく「〇〇という研究結果が出ました」と報道があると思いますが、患者さんを対象にした研究は必ず研究機関の倫理審査を受けなければいけません。それで倫理的に大丈夫というお墨付きがないと実行に移すことはできません。患者さんを守るためにいろいろな専門家が研究にはかかわっています。

ちなみに、私は京都大学の客員研究員という立場をいただいているので、倫理審査は京都大学にお願いしています。ただ、所属の研究室の教授がもう少しで定年になるので、それからはどうしたらよいかなと思案中です。

いずれにせよ、よりよい治療を目指すには、自分から研究するという姿勢が大事だと思っています。

さて、それはさておき、当院のブーゲンビリアに再度花が咲きそうです。でも、ブーゲンビリアで花に見えるところは実は葉らしいですね。

そんな感じでまとまりないお話でしたが、季節の変わり目お体お気を付けください。季節がゆっくりと変わるように、ゆったりと生活したいものですが・・・

f:id:ohashiclinic:20220407113334j:plain

こんなつぼみだったのです

f:id:ohashiclinic:20220407113258j:plain

花が咲きそうです(でも葉とは・・・)

 

マイナンバーカードでの受付

マイナンバーカードでの受付、ご存じですか?マイナンバーカードが健康保険証の代わりになるんです。

一時期ニュースでも取り上げられていました。当院でも早々から導入しています。しかし!これまで使われたかたは一人・・・

まだまだ、マイナンバーカードの活用・普及には時間がかかりそうですね。個人情報が安全に保たれるかということに心配が大きいのかもしれません。

他の医療機関で処方された薬剤情報の共有や特定健診の結果が共有されるということですが、まだ当院の電子カルテシステムではそこまでの活用ができず、ただただ、健康保険証の確認の代わりという活用です。しかし、ゆくゆくはそこまで活用できたら、過剰な処方や採血が避けられるのでとても良いと思っています。

ご紹介でしたー

 

f:id:ohashiclinic:20220301100536j:plain