こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます 2024年

2024年になりました。

2023年5月には新型コロナウィルスが5類感染症になり、行動制限が解除され自主的に行動できるようになりました。振り返ると、そんな最近のことだったかなと思えるほど、あわただしく日々が過ぎています。

さて、2023年何ができたかというと、強迫症アプリの開発は第二バージョンを作成し、再度患者さんに試していただいているところです。この結果次第で、次の比較研究(アプリを使った方と使わない方を比較する研究です)へと進んでいけたらと思っています。

当院木村心理師もずいぶん強迫症認知行動療法の施行件数が増えました。当院での強迫症の治療は自信をもってお勧めできるレベルに達しています。また本年はこれまでと少し違った強迫症のアプローチをペンシルべニア大学の研修を通じて勉強する予定です。

社交不安障害の認知行動療法は継続はしているのですが、希望者が案外少ない印象です。院内の広報でしっかりご紹介していきます。

パニック障害に対する認知行動療法も実施を開始しています。積み重ねていきます。

過敏性腸症候群認知行動療法は知人の研究者が、オンライン治療の研究を開始しているので、ご協力しつつ、当院でも提供できるように勉強を進めていきます。

訪問診療は継続しています。電動自転車ゆえ、やはり遠方には伺うことができません。他のクリニックの医師にも訪問診療が魅力的に感じられるように、情報の発信なども考えたらよいのかなとも思っています。

就労支援・生活支援も継続しています。ただ、現状のやり方にもっと工夫の余地がないのかを探っていきたいと思っています。昨年末には近所の就労支援機関の方と交流をしましたが、もう少し多くの方を交えて、現状の把握や今後できることなどを模索する会を開くことができたらと計画しています。

それから個人的な目標としては、労働衛生コンサルタントという資格を来年とれるように勉強しようと思っています。現在持っている日本医師会認定産業医の資格にかぶるのですが、労働衛生コンサルタントという資格は国家資格なので、より深く勉強しようと思います。

当院でしかできないことに少しずつ挑戦して、他でもできるようにしていくこと、 治療や支援が届いていない人に届けることは当院の目標です。そのためには、当院のスタッフも健康で過ごせなければいけません。引き続き工夫をしていきます。

2024年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

本の紹介 「脳科学者の母が、認知症になる」 

本日は久々に本の紹介です。「脳科学者の母が、認知症になる」恩蔵絢子著。

 

 

著者は脳科学者です。母が認知症になり、脳科学の観点から、母の行動の意味や対策を説明しようとした本が本書です。しかし、ただ単に科学的知識を羅列したのではなくて、お母さまの認知症に気づいたころとか、病院に連れていくときなど、御自身の体験のお話を書きつつ、そのエピソードに基づきながら科学的な知識を入れ込むという具合に、どこか心のある温かみのある本でした。

実際の所、脳の部分と認知症の症状が対応しているかというのは、厳密にはわからないことだと思いますが、辛い・悩ましい症状を意味もなく耐えるのはつらいものです。「なるほど、この症状はこの脳の部分がうまく働いていないんだ。だからこうしたらよいのかも。」と少しでも意味を見つけたり、対応への希望が持てると、耐えるにも少し力がでるかもしれません。そういう意味で本書のような本を読みながら、様子を見ていくのも役に立つと思います。

ただ一方で、これが絶対だと思わず、本で書いているのにうまくいかないなどと自分を責めないことも大事です。困る症状は、どんな方が対応しても困るものです。実際、本書のあとがきでもこのように著者が書いています。

2020年年末から数か月、燃え尽き症候群のようになっていた。その頃、母がトイレの失敗をときどきするようになっていて、私は驚いた顔をしないように、怒ったりしないように、と自分の感情をコントロールして必死で対応していた。しかし、ある日、両親のために夕食を作らなくては、と仕事から急いで帰ってきて、そうやって作った料理に、母が全く手を付けてくれなかったことがあった。小さな出来事だけれども、追いつめられていたのだろう。「こんなに一生懸命やっているのに、私の気持ちは拾われない。もう無理だ」と思った。感情を見る努力が大切だ、と言ったが、やりすぎてしまうと問題らしい。しばらく母から離れ、自分の時間をとった。

著者のように冷静に分析しようとしている方でさえ、うまくいかないことも多々あります。介護に関わる方はご自身も大事にしてあげてくださいね。

こんな一節も心に残りました。

私自身、母との領域の攻防戦は今でも続いていて、母の状態に対して毎日不安で、時にイライラしている。しかし、確かに幸せな瞬間もある。

大変な時は多いかもしれませんが、いつか良い時がひょいと現れることがきっとあると思います。季節が巡るように、辛い時があれば、きっと良い時も訪れます。

お体お大事にお過ごしください。

過敏性腸症候群の治療研究について

私は現在、京都大学医学研究科健康増進・行動学分野というところの客員研究員をしているのですが、同じ研究室に所属している医師が、過敏性腸症候群に対する動画併用治療の研究をしています。

もともと彼女は過敏性腸症候群に対する集団治療で素晴らしい効果を上げていたのですが、より多くの方に治療を広げるために、動画を併用しつつ治療をするという研究をされています。

過敏性腸症候群に対する心理療法を受けることができる医療機関はなかなか見つからないと思います。私も彼女の研究を応援しています。ご興味ある方はぜひアクセスしてみてください!

jpn01.safelinks.protection.outlook.com

希望の家 コミュニティプラザの内覧会にお邪魔してきました

少し前になりますが、希望の家 コミュニティプラザの内覧会に行ってきました。希望の家は宝塚市でも長い歴史のある社会福祉法人です。

当院では、地域活動支援センターのひなたさん、JCC希望さんを中心に患者さんがお世話になっておりましたが、これらの逆瀬川地域の支援機関が一つの大きな建物の中に集結する!というのが希望の家コミュニティプラザという建物です。

とても立派な建物でした。以前、ひなたさんは一軒家で、それはそれで味がありましたが、こちらはこちらで立派ですね。また色々な支援機関が一つの建物に入るということで、より連続性のある支援ができるのではないかと想像しています。

私がうかがったのは内覧会でまだ活動はされていないところでしたが、今後もつながりを深めていければと思った一日でした。

(ちなみに、下記のリンクの写真の中で、私がちらっと映り込んでいました!・・・ってどうでもいいですね・・・)

 

www.kibounoie.org

5年が過ぎました

大橋嘉樹先生よりクリニックを引き継いで5年が過ぎました。振り返ると短いとも長いとも言いづらい感覚です。1日1日、目の前のことを乗り越えているという表現が一番ぴったりくるように思います。

目の前のことに集中しすぎると、大きな視点で考えなくなってしまうので、注意せねばと地域の関係機関との交流も意識している今日この頃です。

職員からお祝いの花をいただきました。スタッフなしではクリニックは成り立ちません。必要としてくださる方がいて、スタッフがいて、治療が成立します。良い治療を提供できるように、引き続き勉強・研究を続けてまいります。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!

職員からのお祝いのお花です。秋らしいです。来院の際にご覧ください。

 

 

コスモスさんと交流しました

当院の近くに就労支援などに力を入れられている、特定非営利活動法人 コスモスさんがあります。1986年から続いている法人なので、歴史は長いですよね。

npo-cosmos.com

当院が力を入れている一つが就労支援です。障害を持ちながらも仕事をしたいとおっしゃるかたに、診察室でお話をするだけでよいかといえば、全くそんなことはなくて、コスモスさんのような就労支援機関を活用して、家から外出する練習の場所として活用したり、仕事への慣れ、訓練など行うことがとても大事だと思います。

医療機関でもデイケアというものを併設しているクリニックや病院もあります。そうすると、もう少し就労へのステップがこまやかに調節できますが、残念ながら、当院にはデイケアはありません。

ですので、当院はこういった就労支援機関の方との協力が、より重要なのです。就労支援機関の方々と交流を深めてお互いの課題や貢献を検討することで、デイケアを持たずとも就労への道筋はスムーズになると思っており、それを目指しています。日本ではデイケアを持たないクリニックのほうが多いと思います。そういったクリニックでもできる就労支援のモデルができたらと思っています。そういったモデルのメリットもきっと提示できると思います。

開業当初、最初のステップはそういった機関へ出向いて見学させていただくことでした。次に、精神保健福祉士として木村に当院に来てもらい、支援機関と継続的なつながりが持てるようになりました。その次に、さらに交流を深めようと思っていましたが、新型コロナ感染症の蔓延が入り、3年ほど経過してしまいました。

ここにきて、その交流の深化・進化を再開したいと思って、まずは身近なコスモスさんと交流と称した飲み会で楽しみました。コスモスさんはちょうど同世代の方が理事長で、他のスタッフもそんなに世代がかわらないエネルギッシュな法人でした。

医療機関として就労支援機関にどう貢献するか、逆にこのつながりをどうしたらもっとスムーズな就労、個人個人にあわせた就労や生活の支援に改善していけるか、これからも交流を深めたいと思っています。