本日は久々に本の紹介です。「脳科学者の母が、認知症になる」恩蔵絢子著。
著者は脳科学者です。母が認知症になり、脳科学の観点から、母の行動の意味や対策を説明しようとした本が本書です。しかし、ただ単に科学的知識を羅列したのではなくて、お母さまの認知症に気づいたころとか、病院に連れていくときなど、御自身の体験のお話を書きつつ、そのエピソードに基づきながら科学的な知識を入れ込むという具合に、どこか心のある温かみのある本でした。
実際の所、脳の部分と認知症の症状が対応しているかというのは、厳密にはわからないことだと思いますが、辛い・悩ましい症状を意味もなく耐えるのはつらいものです。「なるほど、この症状はこの脳の部分がうまく働いていないんだ。だからこうしたらよいのかも。」と少しでも意味を見つけたり、対応への希望が持てると、耐えるにも少し力がでるかもしれません。そういう意味で本書のような本を読みながら、様子を見ていくのも役に立つと思います。
ただ一方で、これが絶対だと思わず、本で書いているのにうまくいかないなどと自分を責めないことも大事です。困る症状は、どんな方が対応しても困るものです。実際、本書のあとがきでもこのように著者が書いています。
2020年年末から数か月、燃え尽き症候群のようになっていた。その頃、母がトイレの失敗をときどきするようになっていて、私は驚いた顔をしないように、怒ったりしないように、と自分の感情をコントロールして必死で対応していた。しかし、ある日、両親のために夕食を作らなくては、と仕事から急いで帰ってきて、そうやって作った料理に、母が全く手を付けてくれなかったことがあった。小さな出来事だけれども、追いつめられていたのだろう。「こんなに一生懸命やっているのに、私の気持ちは拾われない。もう無理だ」と思った。感情を見る努力が大切だ、と言ったが、やりすぎてしまうと問題らしい。しばらく母から離れ、自分の時間をとった。
著者のように冷静に分析しようとしている方でさえ、うまくいかないことも多々あります。介護に関わる方はご自身も大事にしてあげてくださいね。
こんな一節も心に残りました。
私自身、母との領域の攻防戦は今でも続いていて、母の状態に対して毎日不安で、時にイライラしている。しかし、確かに幸せな瞬間もある。
大変な時は多いかもしれませんが、いつか良い時がひょいと現れることがきっとあると思います。季節が巡るように、辛い時があれば、きっと良い時も訪れます。
お体お大事にお過ごしください。
