こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

本の紹介: 「もし部下が発達障害だったら」

本日は本の紹介です。「もし部下が発達障害だったら」佐藤恵美著です。

当院でもたまに会社の上司から発達障害じゃないか見てもらってこいと言われて受診する方がいます。そんな現状と医療側のできることをしっかりと紹介してくれているのが本書です。

 

もし部下が発達障害だったら

もし部下が発達障害だったら

 

 

精神障害一般に言えることですが、精神障害はここからここが正常、ここからここ異常というようにかっちりを線引きをすることが難しいことが多々あります。発達障害も同じです。黒から白に色が徐々に変化するように、正常と異常の境もグラデーションになっています。また、置かれた環境で人の性質が浮き上がったりすることもあります。この2つの要因だけでも正常と異常を判断するのはとても難しいのです。

扱いづらい人がいると、発達障害ではないかと決めつける方がいますが、まずは発達障害とは何かを良く知ってみること、それから病気と思っていない人が病気といわれる気持ちをよく考えることがまず必要だと思います。

注意欠陥多動症には薬が効果があることがありますが、自閉症スペクトラム障害に対する薬剤はなかなかなく、結局はどう対処していくか、どう環境調節していくかが中心となります。診断を勧める場合には、勧めた人もそこまでサポートしていく必要があるということをしっかり認識しておいた方がよいでしょう。

そこの事情を本書はより詳しく説明してくれています。もし部下が発達障害だったら、というタイトルですが、ご本人向けの対処法もしっかり書いてあります。読みやすいですし、おすすめです。

会社の現場も医療のどちらもよくご存じな方が書かれているのだろうなと思います。