こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

本の紹介: 私が欲しかったもの

今回は本の紹介です。「私が欲しかったもの」著者 元マラソン選手 原裕美子

 

 

摂食障害とそれにまつわる窃盗症で苦しんだ原さんの自伝です。もしかしたら、ニュースで見たことがあるかもしれません。

私は病気の面からこの本を読んでみようと思ったのですが、読んでみると、まずプロスポーツ選手の過酷さに強い衝撃をうけました。過酷な練習と強烈な体重管理の様子を見ていると、これで一体病気にならない人はどんな人なのだろうと思ってしまうほどです。この本を読んでから、駅伝やマラソンを見ていても、選手の背景を勝手に想像してしまって、元気で進んでくださいと、ちょっとした祈りの気持ちになってしまいます。

さて、原さんの場合は、この体重管理から摂食障害となり、過食嘔吐のために物を大量に買うようになりました。そこから窃盗も始まりました。最終的には逮捕されます。また、これだけではなく、色々な人生の困難にも遭遇していきます。

現在は依存の治療を受けて、回復途上にあるようです。ここまで回復して良かったと思いますが、なかなか大変だったことだと思います。医師の力量もすごいものがあったと思います。

どなたかのお役に立つような本かなと思って読み始めましたが、状況がかなり特殊なので、参考になる方は多くはないかもしれません。また本書で紹介されている治療は、この方には有効だったようですが、また研究成果がしっかりと提出されていないようです。ですので、そこも強くお勧めすることはできません。しかし、公的な病院で行われているようなので、今後の検討が待たれるところです。

一流はどこかしら無理をしていることもあるのかな。私にはその世界は想像でしかわかりませんが、ご自身の健康や幸せも大事にしてほしいと思います。余計なお世話かな。