こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

ただこの一撃にかける

昔のNHKの番組を見ていたら、2003年に放送された「ただこの一撃にかける」という、”にんげんドキュメント”というシリーズの一作品を目にしました。

タイトルもかっこよいですし、何か一途な雰囲気にひかれて見てみました。日々の生活が、霧の中で進んでいくようで、一心に打ち込むというクリアなものを気持ちが求めていたということもあったと思います。

栄花さんという素晴らしい剣士のドキュメントで、北海道の方ということで、これもまた北海道出身の私にとっては何かうれしい感じでした。

かつて日本で優勝を逃し、その後優勝し、世界大会の団体戦で大将として勝利するという過程を描いた作品です。この中で何に悩み、模索し、今どう考えているかということが紹介されていきました。最後の団体戦では、10分の延長戦で、無心の突きが決まって勝利するのですが、そこにこれまでの人生が凝縮されているようで感動しました。

印象に残った言葉を書き留めたのでご紹介します。

ただ勝負、勝ち負けにこだわっている。そこに無心の技というか求めているところは出ないと思うんですね。

やっぱり何か変な欲があったりする。それを克服するために違う面で鍛えるというか、心の問題ですかね。

相手に勝つことも必要なんですけど、最後はどれだけ自分に勝てるかというところになってくると思うので。

自分に勝つということは、苦しさ、厳しさ、つらさから逃げないということで。

正しいことをするというのはすごく厳しくて難しいことなんですよね。

それを自分でやってみて、子供たちはどう感じるかわからないですけど、伝えていきたいというのは強いですね。

人に認められたい、人より優れていたいというのは自然な欲求ではあると思います。そうして、比べてみて自分が劣っていると感じると、落ち込んでしまう。特に今はSNSなどで、常にいろいろなものとの比較ができてしまう。それが現実であろうと虚構であろうと。

しかし、大切なことは相手に勝つことではない、負けたことでもない、自分がここでどうありたいか、どうすることが正しいか、それから目をそらさない厳しさ、勇気、努力が大切なのではないかと栄花さんはおっしゃっているように思いました。

暇な時間があるとついつい携帯で文字や映像を眺めては、自分の考えがどこかに行ってしまいますが、たまには現代の刺激から離れて、自分が何を大切にしたいか、どうありたいか考える時間をもつのも大事だなと思いました。

自分がどうありたいかというのもなかなかわからないことかもしれませんが、私も時々自分を見つめてみましょう。何か見つかるかな。思い出すかな。