こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

本の紹介「ACTメンタルエクササイズ」

1か月ぶりの更新になってしまいました。今回も本をご紹介します。「ACTメンタルエクササイズ」武藤崇著です。

 

人は悩む時には、”言葉”で悩みます。〇〇したらどうしよう、〇〇してしまった、私は〇〇だ・・・などなど。ACTという心理療法は、この言葉と気持ちのつながりにはまり込んでいる状態を、いったん横において、自分にとって価値がある人生を手助けする心理療法です。

ACT(アクト)という言葉は、Acceptance(受容) Comittment(献身) Therapy(治療)の略です。自分の言葉がどのような気持ちを起こしているのかを、距離を置きながら観察しつつ、そのままに流していく(受容)と自分が価値があると思うことに向けて行動していく(価値への献身)という意味です。略語のACTはそのままの意味では”行動”するということですが、略語のとおり行動・体験することに重点を置いています。

マインドフルネスとも多くが共通しますが、ACTの特徴は、自分が何を人生の価値とするかをしっかり考えさせる点です。あと24時間しか生きられないとしたら何をしますか?・・・のようなワークが色々あります。

著者の武藤崇先生は日本でACTを広めた第一人者です。この方の本はいろいろあって、私も専門書でちょっと読んだのですが、今回の「ACTメンタルエクササイズ」はその中でも一番わかりやすくて、コンパクトで、これだけでもずいぶんいいのじゃないかと思える本でした。(あとの本は結構分厚いんです・・・)

世の中にはいろいろな心理療法があって、私自身は認知行動療法という心理療法を中心に学んでいますが、どの心理療法にも共通するところは、自分の気持ち、考えを観察するというところだと思います。流派によっては体の感覚を重視するものもありますが、これもやはり気持ちに通じるような”自分の観察”だと思います。

自分が何を考えてどんな気持ちになっているのか、体の感覚はどんな感じになっているのか、を観察して書いてみたり、自分は今こういうことを考えていると口に出してみる(心の中でも)。そうすると、その間はマインドフルネスのように、気持ちや考えと自分が一体にならずに、時間を過ごしていることになります。その時間はごく短い時間かもしれませんが、それを徐々に頻繁に長くしていくことが治療の最初の肝のように思います。

若干横道にそれましたが、この本はイラストも優しくて読みやすくてお勧めです!