こころの診療所 から

宝塚市大橋クリニックの院長ブログです

心療内科学会シンポジウムでの発表が掲載されました

昨年12月に恩師に声をかけていただき、札幌で行われた心療内科学会に参加しました。『在宅医療における心療内科的課題』というシンポジウムで4人のシンポジストの一人としての参加です。「精神科訪問診療の実際ー私の経験より」という題名で発表しました。

 

医師は私のほかにもうお一人でしたが、ちょうど私が学生時代に見学に伺った診療所の方で見学風景を懐かしく思い出しました。もう一人は看護師さん、あと一人はケースワーカーの方。それぞれの方のお話が勉強になりました。

私はもっぱら精神科についての訪問診療を行っておりますが、内科的な訪問診療でも難しい局面になると、共通した問題があるようでした。慢性疾患や長く付き合わなくてはならない病気に対しては、医学の限界があります。どう病気に対処するのか、どう生きていくかは患者さんの人生観がありますし、一緒に暮らしている家族の考えもあります。

医療・介護スタッフでも医師、看護師、ケースワーカー、薬剤師、心理士などなどたくさんの職種があり、それぞれに人生観やそれぞれの職種からの意見があります。こうした意見の違いをどうするのか?そのあたりが、共通する難しさのように思いました。

しかし一方で、違いがあるので、色々な方の人生から学ぶところも多いし、精神科医としては患者さんの背景の多様さを改めて自分の中に蓄積する機会にもなります。もちろん、職業人としてだけではなく、人間として自分の人生を見つめることにもなります。

 

私の発表では、河合隼雄先生の”中空構造”の理論やLumbertという人の心理療法の効果についての論文を紹介しながら自分の考えを述べました。

中空構造日本の深層 (中公文庫)

中空構造日本の深層 (中公文庫)

 

 

Psychotherapy Relationships That Work: Evidence-Based Responsiveness

Psychotherapy Relationships That Work: Evidence-Based Responsiveness

 

 

 その際の発表内容が心療内科学会誌に先日掲載されました。

www.jspim.org

英文だとなかなか自分の思いを表現できませんが、日本語だと気持ちよく表現できるので、日本語でも機会を見つけて論文なり表現なりしていきたいなと思っています。このような機会があるのも、恩師の前沢 政次先生が声をかけてくださったお陰です。学生時代から朝の時間に診察の練習や、ケーススタディの勉強に付き合って下さった本当によい先生です。今でも地域医療に熱意を持って取り組まれているお姿に刺激を受けながら、私も頑張らねばと思う日々です。